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2016年09月25日

日本科学未来館科学×コサイエ座談会 <第3回「本当に世の中で考えなきゃいけないから、子どもたちにもそれを学んでもらう」>

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2016年09月25日 カテゴリー:イベント告知 / 対談
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昨年9月から開講している「Miraikan Lab  サテライト」について、日本科学未来館の科学コミュニケーターの皆さんと語り合う座談会を開催しました!

 

日本科学未来館(以下、未来館)は、東京お台場にある科学館であり、先端科学技術と社会をつなぐ役割を担っている科学コミュニケーターを多数擁する機関です。

 

コサイエは開業当初から「Miraikan Lab サテライト」実施場所として未来館が開発したプログラムをコサイエコーディネイターが行ってきました。実施してきたプログラムは気象コース単発講座2つ、ロボット工学コース単発講座1つ、そして4月にスタートした気象コースシリーズ講座。

 

今回は、単発講座での試行錯誤や、気象コースシリーズ講座「天気が教えてくれる地球のこと」やこれからリリースされるロボット工学コースについて、いつもお世話になっている未来館の科学コミュニケーターの皆さんを迎えて、語り合いました。

 

当初は1回完結の記事とする予定でしたが、その中身の濃さ、皆さんに伝えたい思いの強さに合わせ、全3回の連載企画としてお届けします!(原島)

 

<第1回「知識が積み上がってわかると面白い」>はこちら

<第2回「大人も楽しんで学んでいる」>はこちら

 

<第3回「本当に世の中で考えなきゃいけないから、子どもたちにもそれを学んでもらう」>

 

 

【松浦】ロボットはどうなりそうですか?

【雨宮】どうなりますかねー?(笑)

【三上】(笑)。10月から、今度はロボット工学コースもスタートするんですよね。

【雨宮】気象と違うのは、気象はやはり、いずれ学校で習うことを自分の中に入れておくという感じなんですけれども、ロボットの場合、プログラミング必修化の動きはさておいて、「(学校で)学ぶことではないが、学んでおいた方が、世の中の見え方が変わってくるよね」というところなので、知識の積み上げはもちろんのことなんですが、「物事に臨む態度」とか、「物事の見方」とかを大事にしようかなと思っています。プログラミングを学ぶ中で、例えば「トライアル・アンド・エラーをちゃんとロジカルにできる」ことに主眼を置く。「とりあえずやってみる」というのも大事なんだけど、とりあえずやってみた後で、「ここはこうだったから、次ここはこうしたら良いんじゃないか」って考えて、それを実現するっていうことのプロセスをすごい大切にしようと思っていて。そこは、他のプログラミング教室のプログラムにはなく、未来館ラボサテライトの特徴になる、そういう講座にしたいです。適当にせずに、言語化はすごく大事にしようと思っていて、「なんでダメだったのか、書き出してみる」とか、「口に出して言ってみる」ってことをやってみたいなと思っています。めっちゃ楽しいですよ、これは。

【三上】おおー。期待値が上がりますね(笑)。これはしっかりブログに文字で残りますからね。赤字、太字で残しておきましょう(笑)。

 

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科学技術を文化として捉える

【原島】改めて、未来館ってどういうところなんでしょう?僕は未来館って、小学生の時に家族で行って、中学では学校で行って、高校もスーパーサイエンスハイスクールでお世話になり、それで大学生でサテライトの講師をやっているというのも不思議なご縁を感じてはいるんですけど、コサイエでちょっと見学にいらしたお客さんに案内して、「未来館のプログラムもあるんですよ。日本科学未来館ってご存知ですか」って聞くと、結構知らない方もいらっしゃって。あと、科学コミュニケーターの方もずっと未来館いらっしゃるわけではないですよね。コミュニケーターを経験して、次の場に移っていく、そういうキャリアの歩み方をされますよね。

【松浦】未来館には活動の柱というのが3つあって、やはり「科学を伝える」というのが最初のところにあります。未来館はその方法を模索したり、伝え方の手法を開発したりしていくという場所なんです。それから、私たち科学コミュニケーターを育成する、「人材を育てる」というのも柱の1つです。人材を育てて、科学を伝えるっていうことのプロフェッショナルになった人間が、どんどん館の外に出ていって、科学を伝えられる人材が全国、世界中に広がっていくということも目指しています。最後に、つながりをつくるということがあって、先端科学技術を伝えていくという意味で、未来館がハブ的な役割を果たして、一般市民の方ももちろんですし、行政とか、大学とか、いろんなポジションにいる人たちをつないでいく。これらが未来館の活動の柱なんですね。それで今回、ここでMiraikan Lab サテライトとしてやっていることは、その3つを全部網羅しているようなものなんです。科学的なものを伝える場としての実験教室、しかもその実験教室を未来館の人材が作って、その人材ではない人たち、つまり未来館で人材養成をされているわけではない人たちに伝えながら、つまり皆さんにも科学を伝える担い手になっていくということで、有機的に科学を伝える担い手を増やしていくということになっています。最後に、パートナー企業であるリコーさんがつくったこの施設で、ネットワークをつないで、一般の子どもたちに体験してもらっていくっていう形でつながりをつくるっていうことを網羅しているのが、このプロジェクトかなと思っているんです。

【田中】未来館の設立理念に「科学技術を文化として捉える」っていう言葉があるんです。音楽とか、アートとか、そういうものと同じように、科学技術を人類が生み出した知財として捉えて、それをどういう風に使っていけば、私たちはこれからもずっと豊かに暮らしていけるのか、それを語り合う場が未来館なんです。お客様には、そういう意識を持って、ぜひ楽しんでほしいなと思うんですけれど、そればっかり言っても、重いじゃないですか(笑)。

【一同】(笑)。

【松浦】「科学を文化にって言われても…」、って思いますよね(笑)。人によっては真逆のものに感じる人もいると思うんですよ。文化っていうのが、どっちかっていうと、文芸的なものとして捉えられていると、アートとサイエンスなんて逆の位置にあると思うんですけど、アートって、実は、元々の語源を辿ると、ラテン語で「技術」を意味する「アルス」からスタートしているんですよね。展示をつくる部署の人が、「科学技術というのはまさにアートだ!」ということをよく言うんです。今あるイメージと真逆のことを言っているようで、実は、本質的には一緒のことで。本当はそうあるべき、ということだと思うんです。

【田中】そうですね。一般の人が持っている科学に対するイメージ、「なんかちょっと難しそう」とか、そういうハードルをできるだけ下げる場であって、だから、スローガンの「科学がわかると、世界が変わる」ということに気づいてもらって、持ち帰ってもらえるといいなと思っていて。たぶん、そこのハードルを下げるために、何をどうやろうかということを科学コミュニケーターが考えて、いろんな企画をやってみているということだと思います。

【原島】未来館の常設の展示って、結構変わるじゃないですか。最近、アートとセットになっているというか、そういう展示が多くなってきたなぁというのが印象として抱いています。

【松浦】表現方法として現れてきてますよね。

【原島】その考え方は教室をつくる時にも反映されたりしていますか。

【松浦】展示物とプログラムって、有形・無形という意味で姿が違うんですけど、目指しているところ、「科学をわかりやすく伝えたい」「それを見て、何と思っているのか吸い出したい」というところは一緒なんです。ただ、展示物って、1回つくってしまうと、内容を大きく変えるのは難しいですね。一方、実験教室のようなプログラムはつくったあと、その話をする人間がどんどん情報を加えていけるという面があり、展示より、もうちょっと自由度が高いのかなと思います。よりソフト寄りというか。そんな感じはしますね。

【雨宮】「コレクションがない」ってよく言われますよね。

【原島】それはよく感じます。コレクションってやっぱり上野の博物館なんですよね。

【雨宮】あそこはアーカイブという観点でもすごい意味があるし見ていて楽しいんですけど、未来館は、何か本物を見て感じるじゃなくても、展示を見て、考え方を変えてもらう、感じ方を変えてもらうとかっていう方が大きいのかなと思います。

【田中】今年の4月にできた展示も、どちらかというと、考え方、思考法。

【松浦】「未来逆算思考」とか。

【田中】それも思考法を体験してもらう展示だし、「100億人でサバイバル」っていう展示も、災害にどう向き合うかっていう展示で。あそこもいわゆる考え方ってところになってくると思うんですけど、それはやはり未来館が考える場、対話の場だと掲げていることが展示にも表れているのかなと思います。そういう点は特徴的ですね。

【松浦】特徴的だね。考え方、そうだね、考え方だよね。

【原島】気象コースやロボットコースでは、個々の知識とかはもちろんありつつも、それが結びつくロジックもありつつも、個々の概念、というよりも、その下にある「科学するとはどういうことなのか」とか、「なぜを突き詰める」ということが子どもたちに身に付けて欲しいことになるんですかね。

【松浦】そうですね。個々の知識、それは本当に最低限、前提としてあるんです。とはいえ、その知識を提供する我々も必死だったけどね(笑)。

【田中】必死でしたね(笑)。

【松浦】”now”で必死ですけどね(笑)。

【田中】ようやく第5回のプログラムができました(笑)。

【雨宮】僕、”will”で必死ですけどね(笑)。

【一同】(笑)。

【松浦】がんばって必死こいてください(笑)。

【雨宮】一緒にお願いします(笑)。

【三上】10月にはロボット(工学コース)がスタートして、気象コースも2クール目が始まっていて、ついに2つが動いていきます。

【松浦】本当は、欲を言えば、気象コースを春夏で受けた子に、秋冬でも受けて欲しいんだよね。そうすると、外で観察するものとかが全然違うじゃないですか。

【雨宮】あー、シーズンが違いますからね。

【松浦】そう。シーズンが違うから。日本には四季があるから、空が全然違うし、本当は雲観察シートとかも無くさずに年中やって欲しいなって思うんです。地球規模課題って、すぐにはわからない課題なんですよね。「地球温暖化しています」って言われても、じゃあ、1年経ったらすごい上がるかっていうと、零点何度上がったとかで。それってやっぱりずっと、意識して何か観察し続けている人がいないとわからないことで、だから、継続して取り組んで欲しいなって気持ちは強くありますね。今回、ロボット工学コースのテーマ「自動運転車」も、世の中で実用化するのはずっと先の話で、今回受けてくれる子たちが大人になった頃に、ようやくどこまで行くかしらというレベルで。

【雨宮】実装されるか、されないかぐらいですよね。

【松浦】そうですよね。でもそういうものを取り扱う訳で。ずっと科学を意識して欲しいというか。科学的な視点で物事を見続けることは大事かなと思います。

【雨宮】特に、ロボット工学コースで言ったら、この時期に子どもでいる子たちってラッキーかなと思っていて。自動運転という大きく私たちの生活を変えるポテンシャルを持った新しい技術が、実際にどういう問題をクリアしながら、本当に生活の中に入るのか、入らないのかっていうのを、当事者で体験することができるんです。その前に、観点として、ロボット工学コースを受けてもらって、「これどうなると思うかな」って考えた上で、その時代を進んでもらうと面白いんじゃないかなと。すごいラッキーだと思います。

【松浦】うん。ロボットの自動運転に関しては、ひらめきがスパンと落ちてきた感覚があるんです。

【雨宮】「これだ!」「スパン!」って。

【松浦】「グサッと刺せる、未来を意識できるテーマはなんだろう」って考えた時に、なんだったっけね。あのひらめいた時。

【雨宮】なんでしたかね。

【松浦】「自動運転じゃない!?」って(笑)。

【雨宮】「それだー!」って(笑)。

【松浦】自動運転は科学技術だけで解決できる問題じゃなくて、でも、感情で決められる問題でもなくて。地球温暖化もそうだし、自動運転もそうだし。「技術的にはここまでできる」もしくは「こういう事実がある」。じゃあ、人間活動をものすごい抑えて、二酸化炭素を出す量を減らせばいいのかっていうと、二酸化炭素減らしたいし、削減する努力はするんだけど、生活が豊かになってきたのに、それを我慢すればいいのかっていうと、それはまた別ですよね。そのチョイスをしていく時に、科学的視点を持って「事実はこれ」その上で「ここまでは妥協できる」って、数字で話し合いをしていかないと、解決の糸口が見えない時ってあると思うんです。残念なことに、答えのないことに立ち向かっていくのって、今の子どもたちなんですよね。今までの大人たちがつくってきちゃった負債を、そのまま未来に押し付けちゃっていいのかっていうと、そうではない。「我々ができることを考える」って未来に対する攻め手だと思っていて。これは個人的な思いですけど。だから、次世代を育てたい。私は3.11の時に思いました。「ちゃんと考えられる人がたくさんいなきゃダメになる」って強く思ったのを覚えています。「気象のお勉強をした」だけじゃなくて、それが、毎日、毎日、心と身体が大きくなっても、日々「今日の風はどっちから」とか意識が続いて、「今年はラニーニャ現象だ、来年はエルニーニョ現象だ」とか、グローバルに気候が動いているところまで意識がいってくれれば、何か変わるかもしれない。科学的視点を持って「対話する」とか、そういうところまでできる次世代を育てたいと思います。思考能力がないと、判断も出来ないし。

【田中】例えば、「実験教室でこれ学んだから、電気をこまめに消しましょう!」って言ってる訳じゃないんですよ。あくまで、科学的な知識や事実を伝えて、知ってもらった上で、そこからどう考えるかは参加者なり、来館者なりに委ねているので。

【松浦】「わかってるけど、電気消すのって面倒くさいから嫌だ!」って言われたら、それはそうなんですよ。「でもじゃあ、違うことでできることってある?」ってところが大事なんですよね。あるんだったらそっちを頑張ってもらえればいいし。「車乗るのやめる」とかでもいいんです。「電気消さないけど、車乗らない」とかでもいいんです(笑)。どっちが効果的かはまたそれは別の話なんですけど。「出しちゃった二酸化炭素を吸収する技術をつくる人になる」でもいいんです。自動運転も然りで、「モノの仕組みがわかってきたけど、やっぱり自動運転車には乗りたくない」って思うんだったら、自動運転車が走っていて、人が運転する車も走っている街並みってどんなものなのかなって考えていってくれればいいんですよ。その方が選択肢を残せるはずで、それはそれで良しって考えています、私は。

【田中】「自分ごととして捉えてもらうにはどうしたら良いか」ということはよく言いますね。何かを知ってもらって、それをどう自分ごととして考えてもらうか。判断はその人次第なんですけど、自分ごととして考えてもらうために「どう設計したら良いのか」「どう伝えたら良いのか」っていうことを考えてる。

【松浦】そうですね。

【三上】時代は確実にそっちに向いていっていますよね。2021年の受験改革でも「自分ごと」って入ってましたね。確実にそっちに向いてますよね。

【松浦】「地球温暖化してます」「はぁ」「二酸化炭素が原因です」「そうですね」みんな知ってるんですけど、自分のことじゃないですよね。

【雨宮】「誰かなんとかしてくれるよ」ってどこかで思ってますよね。

【松浦】自分ごととして考えてもらうためには切り口をどこに置くかが大事ですよね。地球温暖化をテーマとして取り上げるのに、エネルギーを切り口に持っていっても良いんですけど、今回の切り口はより身近なお天気からスタートするっていうことだったんですよね。

【田中】なかなか自分ごとって難しいですけどね。

【原島】色々、概念的なものも含めて、子どもたちに渡すものって、教材じゃなくて、考えるための素材というか、そういうものになっているんだろうなと考えたこともあるんです。それで考え続けて欲しいということがあるし、それをやり続けていかないといけない時代になりつつもある。でも今の子どもたちの特徴として、答えを間違うことを恐れるってことがあるし、「これが正解」ってわからないと話してくれないところがあって、そこをどう乗り越えられるようにしていくのが良いのかなっていうことを、自分で講座をやりながらでも考えています。それが、なんとなく今日、少し解けたように思います。気象もずっとそこにある、世の中どう変わっていこうが気象はずっとそこで動き続けるじゃないですか。自動運転車も本当に今から話していかなければいけない話題で。教えるためのものではなくて、本当に世の中で考えなきゃいけないから、子どもたちにもそれを学んでもらうってことが、リアリティにもつながるし、考え続けるってことをエンカレッジするというか、促すというか、そのためには、そういうテーマを扱うテーマに掲げていくことが大事なのかなということを思いました。

【田中】しっかりしてますね。

【一同】(笑)。

【松浦】どうしたの、お兄ちゃん(笑)。

【田中】しっかりしている大学4年生だなと思って(笑)。

 

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「『難しそうだな』とか、『興味ないな』とか、そう思っている子にこそ受けてもらって、受けることで変わって欲しい」

【三上】最後に、どんな子どもにこの授業を受けて欲しいと思いますか。もしよかったら、お一人ずつ。「こういう子どもにぴったりだよ」とか、「こういう子どもに受けてもらえると良いんじゃないかな」とか、最後にちょっと、もしあれば聞きたいなと思います。

【田中】なんだろう…。「みんな」。

【松浦】そうだね、みんな!

【三上】おおー。

【田中】そうだな、「難しそうだな」とか「興味ないな」とか、そう思っている子にこそ受けてもらって、受けることで変わって欲しいと思うので。興味があることって自分で知ろうとするけど、あんまりそういうこととは馴染みのなかった子が受けることで、自分の中にそれまでなかった気づきとか楽しさとか、そういったことをこのコンテンツの中で引き出せたらいいなとは思います。

【松浦】そうですね。私は自分が理科大好きで。小3から小6が理科専科の担任で、理科三昧だったんですよ、授業が。おかげで本当に理科が楽しくて、そのまま自分は理系に進むと信じて止まなくて、うっかり大学の進学までずっと「理系で行く!」ってバーっと走っちゃって。でも、ふたを開けてみると、自分は文系の方が得意だったんですけど(笑)。私、高校の時は国語と社会の方が得意だったんです。

【原島】でも突っ走ったんですね(笑)。

【松浦】うん。だから、得意なことは文系的なことが多いですけど、どうしても理系の世界に行きたかった。それはやっぱり理科が好きだったからなんですよね。わかることがすごく楽しかったんです。だから、「苦手だな」って思っている子とか、「なんか難しそう」って思っている子にこそ受けて欲しいなって思います。あと、「理科が嫌い」「理科が好き」にも色々あって。「生き物嫌い、でも、ロボットは好き」あるいは、「生き物好きだけど、ロボットは苦手」みたいなこともあると思うんです。私、虫は苦手だし知らない生き物触るのも苦手だったんですけど未来館に来て、とりあえずつかめるようになったので。

【一同】(笑)。

【松浦】それは、「生き物って面白いよ」っていろんな生き物の世界を教えてくれる同僚がたくさんいるからで。昆虫はまだ苦手だけど、イモリ、ヤモリとかは平気になっちゃったし、海の生き物とかも、ナマコとか大丈夫になりました。

【田中】普通それ、逆じゃない?(笑)

【松浦】そう?(笑)ナマコとかも、水族館の体験コーナーで普通につかんで「ほれほれ」ってやれるようになっちゃって(笑)。

【雨宮】逆ですね(笑)。昆虫から入った方がいい(笑)。

【三上】「入った方がいい」(笑)。

【松浦】昆虫はね、未だに「まだちょっといいかな」って。

【雨宮】カブトムシとかは?

【松浦】うーん、でもセミとかは、近くに行って「うーん…」って覗きこんで観察するようになったから、そこはね、ちょっと歩み寄ったと自分の中でも思えていて。物事の見方が自分の中で変わって、「何が面白いのか」っていうのがわかると、一気に平気になると思うんです。だから、Miraikan Lab サテライトをそのきっかけにして欲しくて。「理科はあんまり好きじゃないけど、星を見るのは好き」っていう子はいるかもしれない。「じゃあ、星が見やすい空の日ってどんな日?」って、それを知るために、一回、気象コース、受けて欲しいな。「なんで放射冷却の時は次の日晴れるの?」っていう話がわかっていると、「じゃあなんで、すばる天文台は乾燥したハワイの山の上にあるの?」っていう話とか、自分の興味あるところにつなげられるようになったら、他のものも好きになれると思うんです。だから、そういう意味でも「苦手だな」って思っている子や、「こっちは好きだけど、あっちは好きじゃない」って食わず嫌いをしている子に来て欲しいなって思いますね。

【雨宮】対象は割と両極端だと思います。ロボットだと、ロボットに興味がある人には単純に受けて欲しいし、「そもそもロボットってなんじゃい」って思っている人にも受けて欲しい。あと、僕、昔、塾をやっていた経験があって、それもあって、昨今のプログラミング教育の動向を見ながら、「子どもに何をしてあげたら良いんだろう」と思っているお父さん、お母さんにも興味を持って欲しいという思いは、ロボットコースを作る時に持っています。「子どもだからやる」っていうよりも、みんなに「考え方を学んで欲しい」「考え方に触れて欲しい」って思っているんですよね。だから、ロボット好きな子と、ロボットのことはあんまりわからないという子、「プログラミングってなに?」と思っている子、あと「プログラミングやったことある」という子、そういう子たちみんなに受けて欲しい。あとはロボットコースのもうひとつの目標で、「ブラックボックスを解き明かす」ということをやって欲しいなって思っていて。

【原島】ブラックボックス?

【雨宮】そう。エアコンって便利じゃないですか。でも、「なんでエアコンって、『ピッ』ってボタンを押すだけで、涼しい風が吹いてくるのか」とか、「なんで同じ『ピッ』って押すだけで、冬は温かい風が吹いてくるのか」ってことを、「中のしくみ」を知ることでわかってほしい。例えばですけど、「壊れた時にどうやればいいのかわかる」とか、行動が変わってくると思うんですよね。だから、言い方がすごく難しいですけど、科学技術を「当たり前」のように使っている子どもたちにも受けて欲しい。「エアコンの中を覗いてみたい」とか、「コピー機の中がどうなっているのか」など色々なことに興味をもって欲しいと思います。

【松浦】同僚の科学コミュニケーターにもいますけどね。プリンタが紙詰まりを起こしただけでフリーズしている人。「いや、怖くないからとりあえずそこ開けてみ」って思う(笑)。

【田中】本当に、我々こそ、そういう人たちで。別に科学全てのプロフェッショナルで、未来館に入ってきているわけではなくて。もちろん、専門はあるんだけど、興味のないこともたくさんあるし。でも、未来館で働き始めて色んな科学コミュニケーターと触れながら、「これって全然興味なかったけど、実は面白いな」とか。

【松浦】興味の範囲を広げているよね。

【田中】来館者や、こういうコンテンツの参加者に気づいたり、体験したりして欲しいことを、科学コミュニケーターが日々体験している。だから、みんなにも知って欲しい。

【松浦】あるね。私、未来館に入るまで、本当に宇宙とか興味がなくて。星見るのも好きだし、星見て「きれいだな」とは思うけど、別に宇宙の研究をしている人たちって何が楽しくて研究しているのか、全くわからなくて。なんでみんなそんなに「宙ガールだ、宇宙だ、なんだっていうのかしら」って、ちょっと冷めた目で見ている人だったんですけど、まだ優先順位としては低いけど、星を見て「あ、そうか、今、タイムトラベルしているようなもんだな」と思えるのは、ひとえに未来館に来て、宇宙好きが山ほどいて熱く話してくれるからであって。さっきの生き物の話も、面白いって思うようになったのは生き物の命のつながりを感じられるようになったからなんですが、やっぱり同僚のおかげで。「今、松浦さんの下に、いっぱい生き物いるから」って言われた時に、私、「ここに宇宙がある」って思ったんです(笑)。「生き物踏んでる」って今まで思ったことはなかったけど、それから「生き物踏んでる」って思うようになったし、道歩いていても「虫踏んでる」って、「あー、また生き物踏んだ」みたいな。その生き物の恩恵を受けて生きているって、妙に実感するようになったんです。そういう体験がやっぱり重なっているからだと思うんですよね。だってね。自分が飼ってる蛇を未来館に連れてきちゃう人もいましたからね。

【田中】僕、爬虫類無理です…(笑)。

【一同】(笑)。

【松浦】無理に平気にならなくても良いと思うんですよね(笑)。私はたぶん、これから先も、小さい虫を見つけたらやっつけてしまうし、カブトムシとかも近づくけど、触らないだろうし。だけど、「そうか、こういう生き物の神秘って面白い」って思うし。それで良いんじゃないかなって。そういう体験の入り口になってくれればなって。

【田中】あそこに空気のかたまりがあるんだなって、ちょっと思ってみたり。そんな見方ができるようになると、すごく嬉しいなって思います。

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座談会はもう少し続きがありますが、お届けする内容はここまで(笑)。

今回のプログラムや科学そのものに対してはひたむきながらも、笑いの絶えない、楽しい座談会でした。

 

未来館の皆さんのように、科学や学びというものに対し、真剣に向き合いながら楽しい大人たちが子どもたちのために集まってくるというのは、コサイエの大きな魅力の一つだと思います。

そんな大人たちと接しながら、科学的な視点から物事を見る目、科学の知識を積み上げて考える考え方を同じ子どもの仲間と一緒に養える、Miraikan Lab サテライト「気象コース」、ただ気象の知識を学ぶ以上のものが得られるプログラムだと思います。

 

コサイエでは、「気象コース」第2クールと10月開講の「ロボット工学コース」のスタートに合わせ、Miraikan Lab サテライトのコース説明会を開催しています。この記事を見て、少しでも興味を持っていただけたならぜひいらしてください!

 

海老名のコサイエでお待ちします!

 

(原島)

 

 

■「Miraikan Labサテライト」気象コース 第2クール目今秋開講予定!

4月からスタートした全6回の気象コースが、この9月で終了します。

同時に、今秋から第2クールの募集を開始します。

そのため気象コースの説明会を随時開催します。詳しくはこちら

■「Miraikan Labサテライト」第2弾ロボットコース 第1クール目年内開講予定!

気象コースに続き、年内に「Miraikan Labサテライト」第2弾ロボットコース開講予定。

詳細は近日公開予定。お楽しみに!

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